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摩擦熱の実験と熱の運動説

熱の物質説を推した多くの人々が化学者でしたが、一部の物理学者は熱の運動説を推しました。それから、熱の運動説を初めて実験的に証明しようと試みる人物が現れます。1753年から1814年を生きたラムフォードという人です。
彼は、穴を開ける機器を金属の円筒に押しつけ、金属の円筒を馬の力により高速に回転させる、という実験を行いました。すると、大量の熱が生じたのです。これは、熱の運動説を支える実験結果に他なりません。熱の物質説を推す人達からは、この熱は運動によって生じたではなく、周りの空気からきた熱素と呼ばれる物質のおかげで生じたのだ、というような反論が来ましたが、円筒を水につけて回転させても熱は同じく生じました。熱の物質説を推す人々の反論は間違っていました。
彼の実験の結果は凄い反響を呼びましたが、支持していた者は2人、デービーとヤングという研究者のみでした。なぜなら、熱の運動説は摩擦くらいにしか適用できず、つまり汎用性がないと思われていたのに加え、何より定量的に扱えなかったためです。そこで、熱と力学の間にどのような関係が成り立っているか、定量的に考える方向に発展していきます。